以前にも書きましたが、当事務所は、相続や遺言が得意です。
お盆にそういった話題になったご家族もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、遺言に関して取り上げていきたいと思います。
遺言に関してはたくさんの記事を目にしますが、同じようなことしか書かれていないような気がします。そんな理論上のよくある話ではなく、実際の問題を取り上げていきたいと思います。
まず、遺言あるあるで定番が自筆証書遺言と公正証書遺言(遺言公正証書)の比較です。
メリットとデメリットが書いてあり、公正証書遺言がおすすめというのがいつもの流れです(今日の日経新聞にも書いてあります)。ですが、これは選択肢でも何でもありません。作るとすれば公正証書遺言以外に考えにくいからです。
何故でしょうか。
自筆で遺言書を書こうと思っておられる方は、後日、実際に遺言を執行する段階でどれだけの手間がかかるかをご存知ないと思います。自筆証書遺言を一時的なものとして利用することは否定しませんが、残された方に多大な迷惑をかけることになります。
公正証書遺言の場合、実は手続き的には全く複雑ではありません。
例えばあなたが、「妻、A子に全財産を相続させる。」という遺言を作りたい場合、必要な書類はあなたの戸籍謄本と印鑑証明書くらいです。後は一度だけ烏丸御池の公証人役場に顔を出していただくだけの手間でしかありません。
また、お亡くなりになって遺言を執行する段階では、その公正証書をお持ちいただければすぐに不動産や預貯金の名義変更手続きが可能です。また、公正証書遺言がある場合、法務局や金融機関に提出する書類が大幅に減るため、相続登記で言えば一般的な相続登記より数万円はお安くなります。
それに対して、自筆で書いた遺言は、書く段階では確かに何の書類も用意する必要はありません。
しかし、お亡くなりになって遺言を執行する段階では家庭裁判所の検認が必要です(難しい用語ですが、要するに裁判所の立会いの下、遺言を開封し、内容を確認する作業です)。文字にすると短いですが、遺言者の出生から死亡に至るまでの戸籍や全相続人の戸籍を揃えて家庭裁判所に申立てをし、その後、全相続人が呼び出されて内容の確認をするという流れになり、数か月かかります。
つまり、自筆で遺言を作っておけば確かに、遺言者は楽で費用もかかりませんが、遺言者が亡くなった段階で公正証書遺言を作った場合以上の手間を残された者に託すわけです。遺言とは、本来残される相続人のために作成するもの。その負担を相続人に押し付けて遺言の意味があるでしょうか。
また、公正証書遺言は、確かに費用がかかりますが、当事務所の報酬も含めても多くの方は総額20万円以下に収まります。絶大な効力の割に安いと思います。
自筆証書遺言の場合の家庭裁判所の検認申立費用や、相続登記の費用が安くなることを考慮するとトータルの費用として自筆の方が有利とは言えないくらいの金額差になります。
ということでこれから遺言を作成される方は、必ず公正証書でなさってください。
費用を気になさる方は、少し寂しいですが、直接、公証人役場に行かれたら良いかと思います。
丁寧な相談は難しいとしても、公証人も多少の相談には応じてくださるはずです。
ひとりでも多くの方に公正証書遺言を残していただけるように願っています。